スパニングツリー代替え機能
スパニングツリーの代替え機能は多くの装置でFlex Link、バックアップポート、EPSR、EAPS等装置独自の機能として提供されています。本項ではスパニングツリーの代替え機能について説明します。
「スパニングツリー」でも説明した通り、スイッチ間でループを形成した場合、ブロードキャストストームが発生し、通信が出来なくなります。
スパニングツリーによってループを回避して冗長性を確保しても良いのですが、切り替わりが遅い、スパニングツリーについて理解が必要等課題もあります。
このため、多くの装置では代替え機能を用意しています。代表的な手法は、ループを構成するスイッチで片方のインターフェースをActive、他方をStandbyにする方法です。

通常時はActive側が通信を行い、Standby側は通信を行わないためループになりません。
Active側がダウンするとStandby側が通信を行うため、スパニングツリーのように冗長性も確保出来ます。

スパニングツリーと比較して仕組みが簡単でリンクダウンを検出してすぐに切り替わるため、切り替えも早く行えます。又、機能を持ったスイッチが1台でもあれば適用出来るため、導入も簡単です。
この代替え機能をメーカーによってFlex Link、バックアップポート等と呼んでいます。
他のメーカーがサポートしているSTPの代替え機能の例としてEPSR、EAPSがあります。EPSRやEAPSではActive/Standbyを設定した機器からHealthcheckを流すためスイッチが直接接続されたリンクダンでなくても検知可能です。

Healthcheckが届かなくなるとタイムアウトを待ってから切り替えが行われます。
又、Active/Standbyを設定したスイッチ以外からリンクダウンを通知する仕組みもあります。

上記で×部分がダウンするとPC間は通信出来なくなりますが、リンクダウンの通知を受信するとすぐにStandby側をActiveに切り替えるため、Healthcheckのタイムアウトを待たずにPC間の通信を復旧可能です。

リンクダウンの通知を受信するとMACアドレステーブルをクリアして、元々のActive側だけにフレームが送信されないように、つまり元はStandbyだった側にもフレームを送信する事で高速に通信を回復する事も可能です。
代替え機能適用時の留意点
代替え機能の適用は単純なループに限ります。
スパニンングツリーでは複雑なループ構成でもBPDUのやり取りにより、複数のインターフェースをブロッキングにして対応可能です。

代替え機能では通常、片方をStandbyにするだけなので、複数のインターフェースをブロックする必要がある場合は適用出来ません。
又、スパニングツリーとの併用も出来ません。
スパニングツリーと比較すると仕組みや導入が簡単ですが、制限には充分留意が必要です。
尚、Active/Standbyの設定を行うスイッチと他のスイッチは機種を統一する必要はありませんが、スイッチ間で連携する機能を使う場合は注意が必要です。
例えばEPSRやEAPSのリンクダウン通知の仕組みを利用するためには、同等機能や連携が可能な機能を持ったスイッチで構成する必要があり、独自機能でもある事から基本的には機種を統一する事が望ましいと言えます。
- 応用編「スパニングツリー」
- 応用編「ループ対策」
- 設定編「Flex Linkの設定」