IPアドレスの種類
IPアドレスは種類分けされています。
本項では、IPアドレスの種類について説明します。
IPアドレスのクラス
IPアドレスは、範囲によって以下のとおりクラス分けされています。
クラス | アドレス範囲 | ネットワークアドレス範囲 | 種別 |
---|---|---|---|
クラスA | 0.0.0.0〜127.255.255.255 | 8bit(最初の「.」まで) | ユニキャスト |
クラスB | 128.0.0.0〜191.255.255.255 | 16bit(2番目の「.」まで) | ユニキャスト |
クラスC | 192.0.0.0〜223.255.255.255 | 24bit(3番目の「.」まで) | ユニキャスト |
クラスD | 224.0.0.0〜239.255.255.255 | - | マルチキャスト用 |
クラスE | 240.0.0.0〜255.255.255.255 | - | 予約 |
基本編のNATで示したプライベートアドレスは、上記のクラスAからCの中に含まれます。
例えば、クラスAのIPアドレス10.1.1.1の場合、8ビットめ(最初の「.」)までの10に0.0.0を追加した10.0.0.0がネットワークアドレスと呼ばれます。クラスBの172.16.1.1であれば172.16.0.0、クラスCの192.168.1.1であれば192.168.1.0がネットワークアドレスになります。
これらはプライベートアドレスの例ですが、グローバルアドレスでも同様です。各クラスのネットワークアドレスを、企業など組織に割り当てることで一意のアドレスになります。
ホストアドレス
ネットワークアドレスを除いた部分がホストアドレスと呼ばれ、機器を一意に特定します。10.0.0.0のクラスAでは、ホストアドレスとして最初の8ビットを除いた0.0.0〜255.255.255(約1,658万個)が使える範囲になります。
クラスBでは0.0〜255.255(約6万5千個)までがホストアドレスに使える範囲、クラスCでは0〜255になります。
以下は、クラスAのプライベートアドレス10.0.0.0、クラスBのプライベートアドレス172.16.0.0、クラスCのプライベートアドレス192.168.1.0において利用できるホストアドレスの範囲です。
クラス | ホストアドレス範囲 |
---|---|
クラスA | 10.0.0.0 〜 10.255.255.255 |
クラスB | 172.16.0.0 〜 172.16.255.255 |
クラスC | 192.168.1.0 〜 192.168.1.255 |
利用できるホストアドレスの数からわかりとおり、クラスAは巨大な組織向け、クラスBは中規模、クラスCは小規模向けになります。
クラスDのマルチキャストについては、マルチキャスト通信をご参照ください。
CIDR
使えるホストアドレスの数を見てわかるとおり、クラスによって非常に差があり、クラスCで少し足りない、クラスBでは多すぎるなど柔軟に対応できません。そこで、クラスの概念をなくしたのがCIDR(Classless Inter-Domain Routing)です。
CIDRでは、172.16.1.1/24などと表記します。24はビット数を表し、プレフィックス長と呼ばれます。つまり、/24であれば24ビットめ(8ビット毎に「.」で区切って10進数で表記するので3つめの「.」まで)までがネットワークアドレスということになります。
172.16.1.1はクラスBに属するためネットワークアドレスは172.16.0.0になりますが、CIDRで/24を付けることで172.16.1.0をネットワークアドレスとして扱います。つまり、クラスBを分割できるようになります。
ビット | 8bit | 8bit | 8bit | 8bit |
---|---|---|---|---|
IPアドレス | 172 | 16 | 1 | 1 |
クラスでの分割 | ネットワークアドレス | ホストアドレス | ||
CIDRの/24での分割 | ネットワークアドレス | ホストアドレス |
上記では、クラスで分割すると16ビット使えたホストアドレスが、CIDRで分割すると8ビットしか使えず、割り当てられるIPアドレスが少なくなります。しかし、クラスBの172.16.0.0というネットワークを1つの企業に割り当てるのではなく、172.16.1.0/24と172.16.2.0/24など複数のネットワークを企業に割り当てることができるようになります。
もう1つの例ですが、192.168.1.1/16と表記した場合、192.168.0.0がネットワークアドレスになります。こちらは、クラスCをよりたくさんのホストアドレスが使えるように結合しています。
ビット | 8bit | 8bit | 8bit | 8bit |
---|---|---|---|---|
IPアドレス | 192 | 168 | 1 | 1 |
クラスでの分割 | ネットワークアドレス | ホストアドレス | ||
CIDRの/16での結合 | ネットワークアドレス | ホストアドレス |
上記はプライベートアドレスで例を示していますが、グローバルアドレスでも同じです。CIDRは、これまでクラスBでなければ足りなかった組織に対して、クラスC相当のグローバルアドレスを2個分渡すなどでアドレスを節約できるため、IPアドレスの枯渇対策にも役立っています。
なお、サブネットマスクと非常に良く似ていますが、組織内で勝手に分割するサブネットはインターネットで使えませんが、CIDRはネットワークアドレス部分を示すためのものであり、インターネットで使えます。また、CIDRで分割、結合したネットワークアドレスを、さらにサブネットマスクで分割できます。
ネットワークアドレス、サブネット番号、ホストアドレス
ネットワークアドレス、サブネット番号、ホストアドレスはそれぞれ以下の関係になっています。
サブネット番号はネットワークアドレスを分割し、ホストアドレスはサブネット番号の範囲で割り当てます。以下の表は、ネットワークアドレスが172.16.0.0でサブネットマスク255.255.255.0の場合の例です。
ネットワーク | サブネット番号 | ホストアドレス | IPアドレス |
---|---|---|---|
172.16.0.0 | 172.16.1.0 | 1 | 172.16.1.1 |
2 | 172.16.1.2 | ||
・・ | 172.16.1.・・ | ||
254 | 172.16.1.254 | ||
172.16.2.0 | 1 | 172.16.2.1 | |
2 | 172.16.2.2 | ||
・・ | 172.16.2.・・ | ||
254 | 172.16.2.254 | ||
・・・ | ・・ | ・・・ | |
172.16.254.0 | 1 | 172.16.254.1 | |
2 | 172.16.254.2 | ||
・・ | 172.16.254.・・ | ||
254 | 172.16.254.254 | ||
例えば、IPアドレス172.16.1.1はネットワークアドレス172.16.0.0を分割したサブネット番号172.16.1.0の中で、ホストアドレス1が割り当てられたアドレスということになります。
ブロードキャストアドレス
ブロードキャストアドレスは、全員宛てのアドレスです。
172.16.1.0のサブネットで255.255.255.0がサブネットマスクの場合、ブロードキャストアドレスは172.16.1.255になります。つまり、ホストアドレスの部分をオール1(2進数8桁でオール1なので10進数では255)にすると、サブネット内すべての装置宛てという意味になります。このため、ブロードキャストアドレスはルーターを越えて通信することはありません。
また、255.255.255.255はすべてのネットワークを示すブロードキャストアドレスになります。ただし、実際にはルーターを超えて転送されることはありません。
MACアドレスでは、FF-FF-FF-FF-FF-FFがブロードキャストアドレスになります。
このため、サブネット内すべての装置宛ての通信ではフレームは以下のようになります。
ブロードキャストの使われ方の例としては、NBTが挙げられます。NBTとはWindows系のエクスプローラでネットワークを参照するとコンピュータ名が表示されますが、これはブロードキャストを使ってやり取りしています。
また、ARPもブロードキャストですが、以下のフレーム構造となっておりブロードキャストIPアドレスは使われません。
ブロードキャストアドレスは全員宛てのため、LANスイッチのMACアドレステーブルに関係なくすべてのインターフェースに転送されます。このため、ループ構成がありSTPなどでブロックされないと永遠に回り続け、ブロードキャストストームを発生させます。
使用を避けたいアドレス
使用を避けたいアドレスの例として、以下があります。
- ホスト部分がオール0
- ホスト部分がオール0となるアドレスは、サブネットを示すため使えません。
- ブロードキャストアドレス
- ブロードキャストは、すべてオール1、またはホストアドレスの部分がオール1のアドレスで、パソコンやサーバー用に割り振れません。
- ゼロサブネット
- IPアドレス172.16.0.1、サブネットマスク255.255.255.0ではサブネットが172.16.0.0となってネットワークアドレスと同じになってしまいます。これは、ゼロサブネットと呼ばれます。今は使えますが、以前は使えませんでした。このため、他に使えるアドレスがあればそちらを使った方がいいかもしれません。
また、以下は特殊なアドレスでルーティングできないなどの制限もあるため、割り当てることができても使わない方が無難です。
- 100.64.0.0/10(共通利用)
- 169.254.0.0/16(リンクローカル)
- 192.0.0.0/24(将来の予約)
- 192.0.2.0/24(ドキュメントなどで利用)
- 192.88.99.0/24(IPv6からv4変換用)
- 198.18.0.0/15(試験用)
- 198.51.100.0/24(ドキュメントなどで利用)
- 203.0.113.0/24(ドキュメントなどで利用)
上記以外で、ループバックアドレス(127.0.0.0/8)やサブネット番号が0.0.0.0の場合は、Windowsなどで割り当てできません。
これは、IANA IPv4 Address Space Registryで定義されています。
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