中規模ネットワークの構築 - 分散ルーティング型の論理設計

40,50人〜数千人が利用する中規模ネットワークを構築する時の分散ルーティング型の論理設計について説明します。

VLAN

分散ルーティング型ではコアスイッチ、エッジスイッチともにルーティングを行うため、VLANの区切りは以下のようになります。

分散ルーティング型でのVLAN設計

つまり、VLANの区切りとなるルーティングポイントはコアスイッチとエッジスイッチになります。

物理的な接続と対比させると、以下のようになります。

分散ルーティング型での物理構成とVLANの関係

各エッジスイッチで異なるVLANを設定する必要があるため、人が移動するとVLANが変わり、IPアドレスも変更になります。

リンクアグリゲーション

コアスイッチ間は重要なため、集中ルーティング型と同様にリンクアグリゲーションで接続します。

コアスイッチ間をリンクアグリゲーションした構成

コアスイッチとエッジスイッチ間も通信量が多い場合は、やはり集中ルーティング型と同様にリンクアグリゲーションを検討します。

アドレス設計

各VLANに割り当てるサブネットを検討し、表にします。

【VLAN表(分散ルーティング型の例)】
VLAN サブネット マスク 用途
10 172.16.10.0 255.255.255.248 コアスイッチ1〜ファイアウォール間
11 172.16.10.8 255.255.255.248 コアスイッチ2〜ファイアウォール間
12 172.16.10.16 255.255.255.248 コアスイッチ1〜コアスイッチ2間
15 172.16.10.24 255.255.255.248 コアスイッチ1〜A棟エッジスイッチ間
16 172.16.10.32 255.255.255.248 コアスイッチ2〜A棟エッジスイッチ間
20 172.16.20.0 255.255.255.0 居室A
30 172.16.30.0 255.255.255.0 居室B

合わせて、「物理設計」で示した「接続表」の各インターフェースに割り当てるVLANを記載します。

また、各LANスイッチやファイアウォールに割り当てるIPアドレスを表にします。IPアドレスは、VLANの区切りとなるルーティングポイントに対して割り当てます。

このため、集分散ルーティング型ではコアスイッチ、ファイアウォール、エッジスイッチにそれぞれ割り当てます。

【IPアドレス表(分散ルーティング型の例)】
VLAN 装置 IPアドレス
10 コアスイッチ1 172.16.10.1
ファイアウォール 172.16.10.2
11 コアスイッチ2 172.16.10.9
ファイアウォール 172.16.10.10
12 コアスイッチ1 172.16.10.17
コアスイッチ2 172.16.10.18
15 コアスイッチ1 172.16.10.25
A棟エッジスイッチ 172.16.10.26
16 コアスイッチ2 172.16.10.33
A棟エッジスイッチ 172.16.10.34
20 A棟エッジスイッチ 172.16.20.1
30 A棟エッジスイッチ 172.16.30.1

スタティックルーティング

分散ルーティング型では、ファイアウォールでデフォルトルートを設定します。

分散ルーティング型でのスタティックルーティング設計例

OSPF

分散ルーティング型の場合は、OSPFの設計を行います。OSPFを使っている他のネットワークと接続しない場合は、エリアを0にします。また、経路を制御したい場合はコストを設定して通信するコアスイッチが固定されるようにします。

分散ルーティング型でのOSPFコスト設計例

通常、100BASE-TX以上の速度であればデフォルトのコストは1です。このため、上記ではコアスイッチ2側や、それに接続するインターフェースでコストを2に設定変更します。これでコアスイッチ1側の経路が優先されます。

また、ファイアウォールでデフォルトルートをOSPFに再配布して、ファイアウォールからコアスイッチ、コアスイッチからエッジスイッチにOSPFで流れるようにします。

OSPFに再配布されたデフォルトルートの流れ

エッジスイッチではデフォルトルートが2箇所から流れてきますが、コストによりコアスイッチ1側の経路が優先されます。また、コアスイッチ1の障害時にはコアスイッチ2側に経路が切り替えられます。

OSPFは障害時の切り替えが高速ですが、切り替えが遅くてよい場合はRIPを用いると簡単です。ほとんどの場合、RIPを有効にし、必要に応じてRIPのバージョンを選択するだけでルーティングできるようになります。

RIPで経路を制御したい場合は、コアスイッチ2を経由した際のホップ数を1ではなく2にするなど変更して調整できます。

DHCPリレーエージェント

DHCPリレーエージェントは、通常はパソコンのデフォルトゲートウェイとなるLANスイッチで、該当のVLANに対して設定します。

このため、分散ルーティング型ではエッジスイッチで各VLANに対してDHCPリレーができるようにDHCPサーバーのIPアドレスを設定します。

DHCPリレーエージェント設計例

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