HSRPの設定 - Catalyst
CatalystでHSRPを設定するコマンドの使い方について説明したページです。
HSRPの概要
HSRPはVRRPと同等の機能を持つシスコシステムズ社のルーターやスイッチに実装される独自機能です。
VRRPはHSRPを基に標準化されたもので、他社のルーターやスイッチでも実装されています。VRRPがCatalystでサポートされた時期はHSRPよりかなり遅くなります。
このため、以前からCatalystを使っている場合は、HSRPを継続して利用している所も少なくないと思います。
HSRPとVRRPでは冗長化を実現する基本的な部分で動作やコマンドが殆ど同じですが、デフォルトや設定出来る数字等が若干異なる部分もあります。
HSRPの基本設定
以下の図のようにスイッチAとBでHSRPを構成し、172.16.1.2と172.16.1.3の仮想IPアドレスを172.16.1.1、172.16.2.2と172.16.2.3の仮想IPアドレスを172.16.2.1とします。
最初にスイッチAの設定ですが、HSRPの設定をする前にVLANにアドレスを設定したり、インターフェースにVLANを割り当てたり、ルーティングを有効にする必要があります。
Switch# configure terminal Switch(config)# interface vlan 10 Switch(config-if)# ip address 172.16.1.2 255.255.255.0 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1 Switch(config-if)# switchport Switch(config-if)# switchport mode access Switch(config-if)# switchport access vlan 10 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface vlan 20 Switch(config-if)# ip address 172.16.2.2 255.255.255.0 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/2 Switch(config-if)# switchport Switch(config-if)# switchport mode access Switch(config-if)# switchport access vlan 20 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# ip routing
上記は「スタティックルーティングの設定」で示した通り、VLAN間でルーティング出来るようにする設定です。
Switch(config)# interface vlan 10 Switch(config-if)# standby 1 ip 172.16.1.1 Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface vlan 20 Switch(config-if)# standby 2 ip 172.16.2.1 Switch(config-if)# exit Switch(config)# ip routing
この設定によりVLAN10はグループ1、VLAN20はグループ2に属する事になります。グループの指定範囲は1〜255です。スイッチBでも以下のように設定します。
Switch# configure terminal Switch(config)# interface vlan 10 Switch(config-if)# ip address 172.16.1.3 255.255.255.0 Switch(config-if)# standby 1 ip 172.16.1.1 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/1 Switch(config-if)# switchport Switch(config-if)# switchport mode access Switch(config-if)# switchport access vlan 10 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface vlan 20 Switch(config-if)# ip address 172.16.2.3 255.255.255.0 Switch(config-if)# standby 2 ip 172.16.2.1 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface gigabitethernet1/0/2 Switch(config-if)# switchport Switch(config-if)# switchport mode access Switch(config-if)# switchport access vlan 20 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# ip routing
スイッチAと同じVLANに対して同じグループ番号と仮想IPアドレスを設定する事で仮想ルーターとして動作します。
アクティブルーターとはパケットを転送する側で、転送しない方はスタンバイルーターと呼ばれます。VRRPで言うマスタールーターとバックアップルーターに当たります。
アクティブルーターを指定する場合は以下の設定を追加します。
Switch(config)# interface vlan 10 Switch(config-if)# standby 1 priority 120 Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface vlan 20 Switch(config-if)# standby 2 priority 120 Switch(config-if)# exit
優先度のデフォルトは100のため、優先度を大きな値に設定する事でスイッチAがアクティブルーターになります。設定可能範囲は1〜255です。
自動的に切り戻す設定
アクティブルーターが故障した場合、もう1台のスイッチがルーティングを行いますが、故障したスイッチが直った時、デフォルトではアクティブルーターに戻りません。VRRPではマスタールーターに戻るため、デフォルトの動作が異なります。
これを戻るようにするには以下を追加します。
Switch(config)# interface vlan 10 Switch(config-if)# standby 1 preempt Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface vlan 20 Switch(config-if)# standby 2 preempt Switch(config-if)# exit
スパニングツリーと併用している場合、スパニングツリーは自動的に切り戻しが発生するため、経路を合わせる必要があればプリエンプトの設定をした方がよいと思います。詳細は「中規模ネットワークの構築 - 集中ルーティング型の論理設計」の「VRRP」をご参照下さい。
尚、切り戻した場合、装置が完全に復旧すれば切り戻しが発生し、その後の通信は継続出来ますが、Down/UPを繰り返すような障害が発生した場合、切り替えが頻繁に起こって通信が出来なくなったり復旧したりを繰り返す可能性があります。又、切り戻す際も一瞬ですが通信断が発生します。スパニングツリーと併用しておらず、このような事を避ける場合は自動的に切り戻さないようにデフォルトのままにします。
タグVLANでのHSRP
「中規模ネットワークの構築 - 集中ルーティング型の論理設計」で示したコアスイッチ2台で集中ルーティングする場合は以下の図のようになります。
コアスイッチ間が接続され、スイッチ間はタグVLANになっています。この場合のスイッチAでの設定は以下の通りです。
Switch# configure terminal Switch(config)# interface vlan 10 Switch(config-if)# ip address 172.16.1.2 255.255.255.0 Switch(config-if)# standby 1 ip 172.16.1.1 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface vlan 20 Switch(config-if)# ip address 172.16.2.2 255.255.255.0 Switch(config-if)# standby 2 ip 172.16.2.1 Switch(config-if)# no shutdown Switch(config-if)# exit Switch(config)# interface range gigabitethernet1/0/1 - 3 Switch(config-if-range)# switchport Switch(config-if-range)# switchport trunk encapsulation dot1q Switch(config-if-range)# switchport mode trunk Switch(config-if-range)# no shutdown Switch(config-if-range)# exit
ポートVLANでもタグVLANでもHSRP部分の設定方法は変わりません。
HSRPの確認
HSRPの確認はshow standby briefで行います。
Switch# show standby brief
Interface Grp Prio P State Active addr Standby addr Group addr
Vlan10 1 120 P Active local 172.16.1.3 172.16.1.1
Vlan20 2 120 Active local 172.16.2.3 172.16.2.1
赤字の部分はプリエンプトが有効になっているか、アクティブルーターかどうかを示しています。PではPのマークがあればプリエンプトが有効、空白だと無効になります。StateはアクティブルーターではActive、スタンバイルーターではStandbyと表示されます。