STPの役割決定手順
STPにおけるルートブリッジや指定ポート、ルートポート、ブロッキングポート等の役割はどのように決まるのでしょうか?
本項では、STPの役割決定手順を説明します。
尚、STP全体の動作や仕組みについては、「スパニングツリー」をご参照下さい。
ルートブリッジの決定
STPのインターフェースには指定ポート、ルートポート、ブロッキングポートと言う役割があります。役割を決める上で重要なのは、どのスイッチがルートブリッジになるかです。
ルートブリッジを決める優先度は、ブリッジIDと言います。ブリッジIDは、ブリッジプライオリティとMACアドレスの組み合わせです。
例 | ブリッジプライオリティ | MACアドレス |
---|---|---|
例1 | 32768 | 11-FF-11-FF-11-FF |
例2 | 4096 | FF-11-FF-11-FF-11 |
ブリッジIDが一番小さいスイッチがルートブリッジになります。このため、ルートブリッジにするスイッチには、ブリッジプライオリティを小さく設定します。
ルートブリッジの全インターフェースは指定ポートとなり、フォワーディング状態になります。
ルートポートの決定
ルートブリッジまでのコスト値合計をルートパスコストと言います。ルートパスコストが一番小さいインターフェースが、ルートポートになります。
ルートポートは、フォワーディング状態になります。
指定ポートの決定
ルートポートにならなかったインターフェースは、接続先スイッチとの間でルートポートのルートパスコストが小さい方を指定ポートにします。
上記では、スイッチBのルートパスコストは30000、スイッチCのルートパスコストは20000です。スイッチC側のルートパスコストが小さいため、スイッチBとCの接続部分では、スイッチC側が指定ポートになります。ルートパスコストが同じ場合、ブリッジIDが小さい方が指定ポートになります。
指定ポートは、フォワーディング状態になります。
ルートポートにも指定ポートにもならなかったインターフェースは、ブロッキングポートになります。
BPDUの流れと役割の決定
BPDUの送受信で、役割が決定されるまでの手順を示します。
図では、スイッチAとBが接続されていてスイッチAがルートブリッジでしたが、新規にブリッジIDが小さなスイッチCが接続されています。
下図の緑字で示す通り、スイッチAからは自身のブリッジIDをルートブリッジとしたBPDUが送信され、スイッチBはルートブリッジのブリッジIDをそのままスイッチCに転送します。
スイッチCは、自身のブリッジIDより優先度の低いBPDUを受信しても無視し、オレンジの文字で示した通り、自身のブリッジIDをルートブリッジとしたBPDUを送信します。
スイッチBは、スイッチCがルートブリッジと認識し、右側のインターフェースをルートポートにして、BPDUを送信するのを停止します。又、そのブリッジIDをルートブリッジとしたBPDUをスイッチAに送信し始めます。
スイッチAは、自身より小さなブリッジIDがいる事を認識し、右側のインターフェースをルートポートにして、BPDUを送信するのを停止します。
このように、複数のスイッチが接続されていてもブリッジIDが小さな機器がルートブリッジに選定され、インターフェースの役割が決まります。又、ルートブリッジで作成されたBPDUは、指定ポートから接続先のルートポートへデフォルトでは2秒間隔で送信され、受信したスイッチが転送する事でネットワーク全体に渡ります。
BPDUにはルートパスコストも含まれているため、仮に複数のインターフェースからBPDUを受信しても、どのインターフェースをルートポート、指定ポート、ブロッキングポートにするか判断可能です。
英語表記
スイッチでSTPのステータスを表示すると、英語で表示されます。このため、以下に英語表記を示します。
英語表記 | 日本語 |
---|---|
Root Port | ルートポート |
Designated Port | 指定ポート |
Blocking Port | ブロッキングポート |
スター型構成での例
スター型トポロジーのネットワークで、STPを構成した際の役割決定例です。
まず、ブリッジプライオリティが最小のスイッチがルートブリッジになります。ルートブリッジの全インターフェースは指定ポートです。
次に、各スイッチでルートパスコストが最小のインターフェースがルートポートになります。
ルートポートでないインターフェースは、接続先のスイッチよりルートポートのルートパスコストが小さければ指定ポートになります。
上記ではルートポートのルートパスコストが、コアスイッチ(バックアップ)では20000、エッジスイッチでは30000です。コアスイッチ(バックアップ)側のルートパスコストが小さいため、コアスイッチ(バックアップ)とエッジスイッチの接続部分では、コアスイッチ(バックアップ)側が指定ポートになっています。指定ポートにならなかったエッジスイッチのインターフェースはブロッキングポートになります。
尚、エッジスイッチと比較してコアスイッチ(バックアップ)の方がブリッジプライオリティが小さいため、仮に双方のルートパスコストが同じ場合でも、コアスイッチ側が指定ポートになります。
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