RSTP状態と高速コンバージェンス

RSTPは、STPのブロッキング状態とリスニング状態をまとめて、ディスカーディング状態としています。本項ではRSTPの状態と、短時間で収束する高速コンバージェンスについて説明します。

尚、MSTPはRSTPの状態と同じで、高速コンバージェンスも行います。

状態の説明

 RSTPには、ディスカーディング状態とラーニング状態、フォワーディング状態があります。RSTPでは、STPのブロッキング状態とリスニング状態をまとめて、ディスカーディング状態としています。

 以下に、各状態の特徴をまとめます。

【RSTP状態】
状態 英語表示 BPDU受信 BPDU送信 テーブル フレーム
ディスカーディング Discarding × ×
ラーニング Learning ×
フォワーディング Forwarding

 テーブル欄は、MACアドレステーブルをエージングするかどうかです。フレーム欄は、フレームを転送するかどうかです。フォワーディング状態になって初めて通常の通信が可能になります。

 スイッチ間を直結して状態が安定している時にBPDUを定期送信するのは、役割が指定ポートの時です。その他の役割になると、BPDUの受信だけ行います。直結する事をポイントツーポイントと言います。

 この他にも、インターフェースが使えない時にはDisable状態になります。

 RSTPはポイントツーポイントで接続すると、途中の状態を遷移せずに高速コンバージェンスが行われます。

 高速コンバージェンスの仕組みですが、スイッチが起動されたりスイッチ間が接続されると、互いにBPDUのプロポーザルビットを有効にして指定ポートになる事を通知します。より小さなルートブリッジのブリッジID、又はルートパスコストが小さいプロポーザルを受信したスイッチは、同意した事を伝えるアグリーメントビットを有効にしてBPDUを返信します。

プロポーザルとアグリーメントの仕組み

 このプロポーザルとアグリーメントの交換が終わると、インターフェースの役割が決定し、ルートポートや指定ポートはすぐにフォワーディング状態になります。

 ルートポートになった方のスイッチ(下図のスイッチC)はフォワーディング状態になる直前に、他のインターフェースをディスカーディング状態にし、ループを防ぎます。

RSTPの一時的ディスカーディングへの移行

 ディスカーディング状態になったインターフェースは、他のスイッチとの間でプロポーザルとアグリーメントの交換を行い、対向のスイッチよりルートパスコストが小さい場合はすぐにフォワーディング状態になります。

RSTPのディスカーディングからフォワーディングへの移行

 このように、RSTPではタイマーを待たずに能動的にネゴシエーションするため、高速に収束します。

 尚、経路変更があった時はTCビットを有効にしてBPDUを送信するため、MACアドレステーブルもクリアされます。STPと異なるのは、ルートブリッジまでTCNを送信するのではなく、フォワーディング状態に変更するインターフェースが個別にTCビットを有効にして送信する点です。MACアドレステーブルもすぐにクリアします。

障害時の切り替え

 代替ポートを持つスイッチで障害を検知すると、代替ポートを即座にルートポートに変更してフォワーディング状態に切り替えます。

代替ポートでの切替

 スイッチAとスイッチC間で障害が発生すると、スイッチCはどこからもBPDUを受信しなくなります。このため、ルートポートがダウンすると自身がルートブリッジになろうとしてBPDUを送信します。優先度が低いBPDUを受信したスイッチBは、自身の方が優先度が高いブリッジID(スイッチA)を知っている事を示すBPDUを返信し、フォワーディング状態になります。スイッチCはそのBPDUを受信してすぐにルートポートになります

RSTPでのBPDU交換による切替

 このように、RSTPでは一瞬から数秒で切り替えが完了します。

 尚、STPでは2秒間隔でルートブリッジから送信されるBPDUを他のスイッチが転送する事で情報が行き渡ります。このため、最大14秒はBPDUが流れて来ない想定です。その他の条件も加味して最大20秒は状態遷移しません。

 RSTPでは、今保持している情報を元に、各スイッチが2秒間隔でBPDUを送信します。つまり、接続先のスイッチは2秒間隔でBPDUを受信出来ます。このため、直接障害を検知出来ない場合でも、6秒間(3回)BPDUを受信出来ないと障害が発生したと認識して状態遷移します。

802.1D互換とエッジポート

 STPと接続されたインターフェースでは、最初はRSTPで利用するVersion2のBPDUを送信しますが、暫くするとSTP向けのVersion0で送受信するようになります。又、必要に応じてラーニング状態を経てフォワーディング状態になります。

RSTPとSTPを接続した時のBPDU送受信

 高速コンバージェンスは出来ませんが、下位互換によりIEEE802.1Dで構成したSTPと同等のタイマーに基づく収束をします。

 パソコン等を接続してもタイマーに基づく状態遷移をするため、フォワーディングになるまで暫くかかります。すぐにフォワーディングにするためには、インターフェースをエッジポートに設定します。エッジポートでは、インターフェースがアップするとすぐフォワーディング状態になりますが、他からBPDUを受信した時は通常の状態遷移をします。

 又、新たな接続や障害が発生すると、「高速コンバージェンス」で説明したようにループを防ぐため、他のインターフェースを一時的にディスカーディング状態とする事があります。この時、エッジポートではディスカーディング状態に遷移しないため、通信が継続可能です。

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