OSPFの仮想リンク

OSPFの各エリアは、バックボーンエリアに接続されている必要がありますが、必ずしも物理的に接続されている必要はありません。

本項では、仮想リンク(Virtual Link)について説明します。

仮想リンクとは

仮想リンクは、バックボーンエリアに物理的に接続されていないエリアにおいて、論理的に接続したかのように扱うための、仮想的なポイントツーポイント接続のことを言います。

OSPFの仮想リンク

仮想リンクを使うことで、バックボーンエリアへ物理的に接続していないエリアでも、他エリアとの通信が可能になります。

なお、仮想リンクは以下の場合は利用できません。

  • 2つのエリアを介して仮想リンクを作成する。
  • スタブエリアを介して仮想リンクを作成する。

仮想リンクの仕組み

以下の図で、1.1.1.1と3.3.3.3の間で仮想リンクの設定をします。仮想リンクの設定は、共通するエリア(以下ではエリア1)に接続された2台のABR(Area Border Router)で行います。

仮想リンクはABRで設定し、その間はユニキャストでOSPFパケットが送受信されます。

エリア1で、1.1.1.1と3.3.3.3の通信が可能になると、2つのルーター間でHelloパケットの交換などにより、隣接関係が構築されます。この時の通信は、ユニキャストです。また、LSAタイプ1のインターフェースとして仮想リンクが含まれるようになります。

仮想リンク自体は、バックボーンエリアの一部と見なされます。このため、バックボーンエリアとエリア2のABRは3.3.3.3です。

仮想リンクはバックボーンの一部

バックボーンエリアと接続されることにより、サマリーLSA(タイプ3,4)が生成・中継されるようになって、エリア間の通信が可能になります。

なお、AS外部LSA(タイプ5)は、仮想リンクで送信されません。これは、上の図ではエリア1を介して中継されます。LSAタイプ5は、スタブエリアを除くすべてのエリア間で中継されるため、仮想リンクからも送信すると重複するためです。

経路の選択

バックボーンエリアに接続されているからと言って、必ずバックボーンエリアを経由して通信する訳ではありません。

メトリックによって、最短経路で通信が可能です。

仮想リンクの場合、エリア間の通信は必ずしもバックボーンを経由しません。

上の図で、2.2.2.2はエリア2とバックボーンエリアの両方から経路192.168.1.0のLSAタイプ3を受信します。ABR:3.3.3.3が、エリア1とバックボーンエリアにLSAタイプ3を送信し、バックボーンエリアからはABR1.1.1.1がさらにエリア1へ中継するためです。

それぞれを経由するコストは、以下のとおりです。

【192.168.1.0へのコスト】
経由するルーター コスト 計算
3.3.3.3 5 2+3
1.1.1.1→2.2.2.2→3.3.3.3 7 1+1+2+3

このため、192.168.1.0への最短経路となる3.3.3.3だけを経由するルートが、ルーティングテーブルに反映されます。

分断するバックボーンエリア間の仮想リンク

バックボーンエリアが分断された場合でも、仮想リンクによって1つのバックボーンエリアとして扱うことができます。

分断されたバックボーンエリア間を仮想リンクで接続できます。

仮想リンク自体は、バックボーンエリアの一部と説明しました。また、仮想リンクを設定した2つのルーターは、隣接関係です。このため、物理的には分断されていてもLSAタイプ1,2,3,4が送受信され、同一のLSDBを持つようになります。

LSAタイプ5は、先に説明したとおり上の図ではエリア1を介して中継されます。